
【記入サンプルあり】工事安全衛生計画書とは?書き方・注意点を徹底解説!
建設現場での安全管理は、工事を円滑に進めるうえで最も重要な要素の一つです。特に労働災害の防止は、作業員の生命と健康を守るだけでなく、工期の遅延や追加コストの発生を防ぐためにも不可欠です。
工事安全衛生計画書は、こうした安全管理の基本となる書類であり、現場で起こりうるリスクを事前に洗い出し、適切な対策を講じるための「設計図」とも言えます。しかし、初めて作成する方や、記入方法に不安がある方も多いのではないでしょうか。
本記事では、工事安全衛生計画書の基本的な目的から具体的な記入例、作成時の注意点まで、実務で役立つ情報を詳しく解説します。これから計画書を作成する予定の方はもちろん、既に作成しているけれどもっと効果的な内容にしたいという方にも参考になる内容となっています。
工事安全衛生計画書とは?
工事安全衛生計画書とは、安全書類(グリーンファイル)の1つで、建設工事における安全衛生管理を計画的に進めるための文書です。工事の内容や規模、期間などに応じて、どのような安全対策を講じるか、どのような危険が予測されるか、それに対してどう対処するかなどを具体的に記載します。
この計画書は、工事に関わるすべての関係者(元請会社、下請会社、作業員など)が安全に対する共通認識を持ち、労働災害を未然に防ぐための重要なツールとなります。特に複数の業者が関わる現場では、安全管理の「見える化」を図るためにも欠かせない書類です。
通常、下請業者が元請業者に提出する形で運用されており、工事の着工前に作成・提出することが一般的です。また、工事の進捗に合わせて定期的に見直し、必要に応じて更新することも大切です。
工事安全衛生計画書の目的
工事安全衛生計画書の主な目的は以下の3つです。
(1)労働災害の防止
最も重要な目的は、工事現場での労働災害を未然に防ぐことです。建設現場には様々な危険が潜んでいます。高所からの転落、重機や資材による挟まれ・巻き込まれ、熱中症など、多くの危険要因が存在します。
工事安全衛生計画書では、このような危険要因を特定し、それに対する具体的な対策を記載することで、作業員の安全を確保します。
(2)作業員の安全意識の徹底
計画書を作成・共有することで、工事に関わるすべての作業員の安全意識を高める効果があります。具体的な危険内容とその対策を明文化し、周知徹底することで、「安全第一」の意識を現場全体に浸透させることができます。
また、定期的な安全活動(朝礼やKY活動など)の内容も計画書に記載されるため、日常的な安全管理の取り組みを促進する効果もあります。
(3)元請会社への提出
法律上は必ずしも作成が義務付けられているわけではありませんが、元請会社が下請会社に対して工事安全衛生計画書の提出を求めるケースが一般的です。これは、工事全体の安全管理を統括する立場にある元請会社が、下請会社の安全管理体制を確認するためです。
特に大規模な工事現場では、複数の下請会社が関わることが多いため、安全管理の可視化と標準化を図るうえでも重要な役割を果たしています。
工事安全衛生計画書の記載内容一覧

工事安全衛生計画書には、主に以下の項目を記載します。順番に詳しく解説していきます。
基本情報(工事名称、工期など)
工事安全衛生計画書の冒頭には、工事の基本情報を記載します。主な記載項目は以下のとおりです。
①事業所の名称
工事の作業場所や工事名称を正式名称で記入します。正確な名称を記入することで、どの工事に関する計画書なのかを明確にします。発注者の会社名ではありませんので、間違えないようにしましょう。
【記入例】
「○○マンション新築工事」、「△△ビル改修工事」等
②所長名
元請けの現場責任者の名前を記入します。ここで注意したいのは、自社の責任者名ではなく、元請会社の現場責任者(所長)の名前を記入する点です。誤って自社の担当者名を記入しないようにしましょう。
【記入例】
元請 太郎
③会社名
自社(計画書を作成する会社)の名称を正式名称で記入します。法人格(株式会社、有限会社など)も含めた正式名称を使用しましょう。
【記入例】
株式会社 安全建設
④現場代理人(現場責任者)
自社の現場責任者や担当者の氏名を記入します。これは会社の社長ではなく、実際に現場を管理する立場の人物の名前を記入します。また、元請けの工事部署の責任者でもないので注意しましょう。
【記入例】
一次 次郎
⑤作成日
工事安全衛生計画書を作成した日付を記入します。西暦または元号を正しく記入し、日付が古いままにならないよう注意してください。
【記入例】
令和7年10月1日 または 2025年10月1日
工事安全衛生方針
工事安全衛生方針とは、安全衛生に関する基本的な考え方や取り組む姿勢を示すものです。会社の安全衛生に対する基本方針や、特に今回の工事で重視する安全面の取り組みなどを記載します。
具体的な取り組み内容としては、「作業前に指差しチェックを行う」や「機械・設備は必ずダブルチェックを行う」などが挙げられます。
【記入例】
弊社は「安全第一、品質第二、生産第三」の考えのもと、全ての作業において労働災害ゼロを目指します。全作業員の安全と健康を最優先し、危険予知活動の徹底と安全衛生教育の充実により、安全な職場環境の構築に取り組みます。また、関係法令を遵守し、継続的な安全衛生活動の改善に努めます。
工事安全衛生目標
工事安全衛生目標は、工事期間における安全衛生を維持するための方針や基本的な考え方を、できるだけ具体的かつ数値化して設定します。抽象的な目標ではなく、達成度を測定できる目標を設定することが重要です。
【記入例】
- 休業災害:ゼロ
- 不休災害:ゼロ
- 安全朝礼参加率:100%
- KY活動実施率:100%
- 安全パトロール:週1回以上実施
- 熱中症予防対策:作業開始前の体調確認を毎日100%実施する
工種・工種別工事期間
工種には工事で行われる工種を、工種別工事期間にはそれぞれの工種の施工期間を記入します。工事の全体像と各作業の流れを把握するために重要な情報です。
【記入例】
- 基礎工事:2025年10月1日~2025年10月15日
- 鉄筋工事:2025年10月16日~2025年10月31日
- 型枠工事:2025年11月1日~2025年11月15日
- コンクリート打設工事:2025年11月16日~2025年11月30日
- 内装工事:2025年12月1日~2025年12月31日
- 設備工事:2026年1月15日~2026年1月15日
- 外構工事:2026年1月16日~2026年1月31日
資機材・保護具・資格の区分/その種類
工事で必要な資機材、保護具、資格などを具体的に記入します。主な項目としては以下のようなものがあります。
- 主に使用する機器設備:クレーン、バックホウ、高所作業車など
- 主に使用する機器・工具:電動工具、溶接機、チェーンソーなど
- 主に使用する資材:コンクリート、鉄筋、木材など
- 保護具:ヘルメット、安全帯、保護メガネ、防じんマスクなど
- 資格を有している者・配置を予定する者:クレーン運転士、足場の組立等作業主任者、電気工事士など
具体的な記入例としては、以下のようになります。
【記入例】
主に使用する機器設備
- バックホウ(0.7㎥)
- タワークレーン(最大吊り荷重5t)
- 高所作業車(最大作業高さ10m)
- 主に使用する機器・工具
- 電動ハンマードリル
- コンクリートカッター
- 電動工具(グラインダー、丸ノコ等)
保護具
- ヘルメット(全作業員)
- 安全帯(高所作業時)
- 保護メガネ(切断・研磨作業時)
- 耳栓(騒音作業時)
- 防じんマスク(粉じん作業時)
資格を有している者・配置を予定する者
- 車両系建設機械運転技能者:2名
- 玉掛け技能者:3名
- 足場の組立等作業主任者:1名
- 高所作業車運転技能者:2名
- 特別教育(研削といし取替)修了者:2名
日常の安全衛生活動
現場で毎日あるいは定期的に取り組むべき安全衛生活動の内容を記入します。安全朝礼やKY(危険予知)活動、安全パトロールなどの具体的な実施方法や頻度を明記しましょう。
【記入例】
朝礼・KY活動
- 毎朝8:00より全作業員参加で安全朝礼を実施
- 各作業班ごとにKY活動を実施し、KYシートに記録

安全パトロール
- 現場責任者による安全パトロールを週1回(金曜日)実施
- 元請安全パトロールへの参加(月1回)
安全衛生教育
- 新規入場者教育:作業開始前に必ず実施
- 職長会議:毎週月曜日に実施
健康管理
- 熱中症対策:WBGT測定と作業前の体調確認
- 作業前アルコールチェックの実施
危険性又は有害性の特定
工事で起こりうる危険について具体的に記入します。作業区分には危険性が予測される作業名を、予測される災害(危険性又は有害性)の欄には、その作業で起こり得る災害について記入します。
【記入例】
- 作業区分:高所作業
・予測される災害:転落・墜落 - 作業区分:重機作業
・予測される災害:接触・挟まれ・巻き込まれ - 作業区分:型枠解体作業
・予測される災害:釘踏み抜き・切創 - 作業区分:コンクリート打設作業
・予測される災害:アルカリ性物質による皮膚炎・目の損傷 - 作業区分:溶接作業
・予測される災害:火災・やけど・アーク光による目の損傷

リスクの見積もり
「危険性又は有害性の特定」で示した項目に対し、危険性のレベルを数値で評価します。一般的には、以下のような指標で評価します。
- 可能性(度合):発生する可能性を1~3点で表す(1:ほとんどない、2:可能性がある、3:極めて高い)
- 重大性(重篤度):災害の重篤度を1~3点で表す(1:軽微(不休災害)、2:重大(休業災害)、3:極めて重大(死亡・障害)
- 見積り:可能性+重大性で算出(2~6点)
見積り基準を基にした危険性の評価(見積り)は以下のとおりです。
- リスクレベル:「見積り」で決定した数値に対して、リスクレベルが決まります。
見積りの数値 | リスクレベル |
|---|---|
2 | 1(対策は不要) |
3 | 2(現時点での対策は不要) |
4 | 3(何らかの対策が必要) |
5 | 4(抜本的な対策が必要) |
6 | 5(即座に対策が必要) |
リスクレベルが大きいほど優先的に対策を講じる必要があります。各作業とそのリスクレベルの記入例を示します。
【記入例】
作業 | 可能性 | 重篤度 | 見積り | リスクレベル |
|---|---|---|---|---|
高所作業の転落・墜落 | 2(中程度) | 3(死亡・障害) | 5(重大な問題がある) | 4(抜本的な対策が必要) |
重機作業の接触・挟まれ | 2(中程度) | 3(死亡・障害) | 5(重大な問題がある) | 4(抜本的な対策が必要) |
型枠解体作業の釘踏み抜き | 3(高い) | 1(不休災害) | 4(かなり問題がある) | 3(何らかの対策が必要) |
コンクリート打設作業の皮膚炎 | 3(高い) | 1(不休災害) | 4(かなり問題がある) | 3(何らかの対策が必要) |
溶接作業の火災・やけど | 1(低い) | 2(休業災害) | 3(多少問題がある) | 2(現時点での対策は不要) |
リスク低減措置内容の検討
浮き彫りになったリスクに対して、具体的にどのような対処をするかを記入します。特にリスク値が大きい項目から優先的に対策を検討し、実施することが重要です。
【記入例】
- 高所作業の転落・墜落対策
・2m以上の高所作業では必ず安全帯を使用する
・作業床端部には手すりを設置する
・昇降設備は適切に設置し、固定する
・安全帯の使用方法について作業前に再教育を実施する - 重機作業の接触・挟まれ対策
・重機周囲に立入禁止区域を設定し、表示する
・誘導員を配置し、合図を徹底する
・オペレーターは作業開始前に周囲の安全確認を徹底する
・作業員に対して重機との接触防止教育を実施する - 型枠解体作業の釘踏み抜き対策
・作業時は必ず踏抜き防止用の中敷きを装着する
・解体後の型枠材は速やかに釘抜きを行う
・釘の付いた木材は指定場所に集積する
・作業場所の整理整頓を徹底する - コンクリート打設作業の皮膚炎対策
・長袖作業着、ゴム手袋を着用する
・コンクリートが皮膚に付着した場合は速やかに洗い流す
・保護メガネを着用し、目に入らないようにする
・洗浄用水を作業場所に常備する - 溶接作業の火災・やけど対策
・溶接作業場所の周囲に可燃物を置かない
・消火器を必ず作業場所に配置する
・溶接面、耐熱手袋など適切な保護具を着用する
・火気監視員を配置する
職名・氏名・再下請会社の関係者の職名・氏名・会社名等
職名・氏名には、自社の管理者名をフルネームで記入します。協力会社の関係者の職名・氏名・会社名には、協力会社の職名・氏名・会社名を記入します。
【記入例】
- 自社
・現場代理人:安全 太郎
・職長:建設 次郎 - 協力会社
①会社名:株式会社山田電工
・職名:電気工事責任者
・氏名:山田 一郎
②会社名:鈴木設備株式会
・職名:設備工事責任者
・氏名:鈴木 健一
元請工事業者への提出書類一覧
元請会社に提出する書類にチェックを入れます。一般的な提出書類としては、以下のようなものがあります。
- 施工体制台帳
- 作業員名簿
- 資格証明書のコピー
- 機械設備点検記録
- 安全教育実施記録
- 健康診断記録
- 特別教育修了証のコピー
【記入サンプルあり】工事安全衛生計画書の書き方
全建統一様式を使った記入例
全建統一様式とは、一般社団法人全国建設業協会が定めた工事安全衛生計画書の標準様式です。ここでは、この様式を使った具体的な記入例を紹介します。
工事安全衛生計画書記入例(全建統一様式第6号)
よくあるミス・作成時の注意点
工事安全衛生計画書を作成する際には、以下のような点に注意しましょう。これらは実際の現場でよく見られるミスや問題点です。
現場と実際の運用が合っていない
工事安全衛生計画書の内容と実際の現場での運用が合っていないケースがよくあります。書類上は立派な対策が書かれていても、現場ではそれが実施されていないという「絵に描いた餅」になってしまうと、労働災害の防止には役立ちません。
また、法令や基準の改正などにより、最新の情報に基づいた内容に更新することも重要です。例えば、足場に関する安全基準や熱中症対策の基準などは、定期的に見直されることがあります。常に最新の情報を反映した計画書を作成するようにしましょう。
抽象的な記述になっている
「安全に配慮して作業を行う」「十分な注意を払う」などの抽象的な表現では、具体的にどのような行動をとるべきかが不明確です。作業内容や工程ごとに、具体的な安全対策を明確に記載することが重要です。
例えば、「高所作業では転落に注意する」という抽象的な記述ではなく、「2m以上の高所作業では必ず安全帯を使用する」「作業床端部には高さ90cm以上の手すりを設置する」といった具体的な対策を記載しましょう。具体的であればあるほど、作業員が理解しやすく、実行しやすくなります。
関係者との共有が不十分
いくら詳細な計画書を作成しても、現場の作業員全員に内容が共有されていなければ意味がありません。作業員全員が理解できるように、分かりやすい表現を心がけ、必要に応じて図や写真なども活用しましょう。
また、計画書の内容は、安全朝礼やKY活動などを通じて定期的に確認し、周知徹底することも大切です。特に、リスクが高い作業や、初めて行う作業については、事前に作業員全員で内容を確認することが重要です。
無料で使えるテンプレート・ダウンロードリンク
全建統一様式のテンプレート
全建統一様式とは、一般社団法人全国建設業協会が定めた工事安全衛生計画書の様式です。建設業界で広く使われている標準的な様式で、最低限必要な情報を文書でまとめられるように工夫されています。
全建統一様式第6号「工事安全衛生計画書」は、以下のURLから無料でダウンロードすることができます。この様式を使用することで、必要な項目を漏れなく記載することができるため、特に初めて計画書を作成する方にもおすすめです。
また、全建統一様式はExcelファイルで提供されているため、自社の状況に合わせて必要な箇所を修正・追加することも可能です。ただし、元請会社から指定の様式がある場合は、その様式に従うようにしましょう。
全建統一様式第6号「工事安全衛生計画書」ダウンロードはこちら
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まとめ〜安全衛生計画書は現場安全の「見える化」ツール〜
書くだけでなく「使える計画書」を目指そう
工事安全衛生計画書は、単なる提出書類ではなく、現場の安全を確保するための重要なツールです。形式的に作成するのではなく、実際の現場で活用できる「使える計画書」を目指しましょう。具体的には、以下のような点に注意して作成することが大切です。
- 現場の実態に即した具体的な内容を記載する
- リスクの高い作業を洗い出し、適切な対策を講じる
- 分かりやすい表現で、全作業員が理解できるようにする
- 定期的に見直し、必要に応じて更新する
計画書の内容を現場で実践することで、労働災害の防止につながります。
定期的な見直しと現場との連携がカギ
工事安全衛生計画書は、作成して提出したら終わりではありません。工事の進捗に合わせて定期的に見直し、必要に応じて更新することが重要です。特に、新たな作業が追加された場合や、作業環境が変化した場合などは、リスクアセスメントを再度実施し、計画書に反映させるようにしましょう。
また、現場で実際に作業を行う作業員との連携も欠かせません。現場からのフィードバックを活かして、より実効性の高い計画書に改善していくことが大切です。安全パトロールや安全衛生委員会などの機会を通じて、現場の声を積極的に吸い上げるようにしましょう。
工事の書類管理には「サクミル」がおすすめです。今回のような現場管理に関わる書類を案件毎にまとめてウェブで管理できます。気になる方は、まずは無料トライアルをお試しください。
さらに詳しい情報は公式サイトや資料請求からご確認いただけます。現場の生産性を高める第一歩として、サクミルを導入してみてはいかがでしょうか?
本記事で紹介した記載項目や記入例、注意点などを参考に、実効性の高い計画書を作成し、労働災害のない安全な現場を目指しましょう。特に、具体的なリスクアセスメントと対策の立案、全作業員への周知徹底、定期的な見直しと更新が重要です。
安全は全ての作業の基本であり、最優先事項です。工事安全衛生計画書を通じて、「安全第一」の意識を現場全体に浸透させ、安全で効率的な工事の実施に繋げていきましょう。
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