
建設業に強い税理士とは?見極める7つの質問と顧問料の考え方
建設業で税理士を探すとき、「建設業に強い」と書かれた事務所はいくらでも見つかります。ただ、その言葉だけでは中身が分かりません。実際に依頼したあとで、工事台帳の話が通じない、決算変更届の様式を知らない、建設業許可のことを聞いたら「専門外です」と言われた——こうしたズレは珍しくありません。
建設業には、建設業法と国税庁の通達によって裏づけられた固有の論点があります。期をまたぐ工事の原価の扱い、外注費と給与の区分、決算から4か月以内という許認可上の期限。これらは業種を問わない一般的な税務知識とは別のもので、知っているかどうかで結果が変わります。
この記事では、「特徴」のような曖昧な基準ではなく、依頼前に投げれば相手の実力が分かる7つの質問として整理しました。あわせて、サクミルのパートナー制度に参加する士業・専門家60社の内訳から、建設業が実際にどの士業を必要としているのかという実データも掲載しています。
建設業に強い税理士を見極める7つの質問
結論から書きます。「建設業の実績は豊富ですか」と聞いても、答えは必ず「豊富です」になります。判別に使えるのは、建設業を知らなければ具体的に答えられない質問だけです。次の7つを初回相談でそのまま使ってください。
# | 質問 | 何が分かるか |
|---|---|---|
Q1 | 未成工事支出金は工事別に管理しますか、それとも期末に一括で振り替えますか | 建設業会計の実務経験 |
Q2 | 外注費と給与の区分は、何を基準に判定していますか | 建設業専用の通達を知っているか |
Q3 | 決算変更届の財務諸表(様式第15号〜第19号)に対応できますか | 許認可と決算の連動の理解 |
Q4 | 建設業許可の申請・更新は、どなたが行いますか | 業務範囲の線引きと提携体制 |
Q5 | 経営事項審査のW評点を上げるために、自社は何をすればよいですか | 公共工事を取る会社への理解 |
Q6 | 月次で工事別の粗利を出すには、こちらは何を渡せばよいですか | 経営管理まで踏み込めるか |
Q7 | 顧問料に何が含まれ、何が別料金ですか | 契約後のトラブル回避 |
Q1 未成工事支出金は工事別に管理しますか
建設業会計の実務経験があるかどうかが、最も早く分かる質問です。
建設業では、着工から完成・引渡しまでが決算期をまたぐことがあります。工事完成前に発生した材料費や労務費、外注費などは、通常、未成工事支出金として資産に計上し、工事の完成・引渡しなど、収益や原価を認識するタイミングに応じて完成工事原価などに振り替えます。
ここで重要になるのが、未成工事支出金や工事原価を工事別に管理しているかどうかです。
工事別に原価を管理していれば、工事ごとの売上や実際原価、今後発生する原価を確認しながら、採算が悪化している現場を期中に把握できます。一方、原価を会社全体の総額だけで管理していると、会社全体の利益は把握できても、「どの現場で原価が膨らんでいるのか」「どの工事の利益率が悪化しているのか」を把握しにくくなります。
望ましい回答は、工事台帳と会計の工事コードを紐づける前提で具体的な運用手順が出てくることです。「期末に一括で計上します」で話が終わる場合は、決算を締めることが目的になっていて、経営管理には使えません。
Q2 外注費と給与の区分は、何を基準に判定していますか
職人への支払いを「外注費」として扱うのか「給与」として扱うのかは、税務上重要な論点です。所得区分によって、源泉徴収や消費税の仕入税額控除などの取扱いが変わるためです。
国税庁は、建設業で働く大工・左官・とび職等について、「大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得税の取扱いについて」(平成21年12月17日付・課個5-5)という法令解釈通達を定めています。
通達では、まず請負契約に基づく対価か雇用契約に基づく対価かで判定するとしたうえで、その区分が明らかでないときは次の5点を総合勘案するとしています。
- 他人が代替して業務を遂行すること又は役務を提供することが認められるかどうか
- 報酬の支払者から作業時間を指定される、報酬が時間を単位として計算されるなど時間的な拘束(業務の性質上当然に存在する拘束を除く)を受けるかどうか
- 作業の具体的な内容や方法について報酬の支払者から指揮監督(業務の性質上当然に存在する指揮監督を除く)を受けるかどうか
- まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失するなどした場合において、自らの権利として既に遂行した業務又は提供した役務に係る報酬の支払を請求できるかどうか
- 材料又は用具等(くぎ材等の軽微な材料や電動の手持ち工具程度の用具等を除く)を報酬の支払者から供与されているかどうか
この通達が対象とする「大工、左官、とび職等」は、日本標準職業分類の大工、左官、とび職、窯業・土石製品製造従事者、板金従事者、屋根ふき従事者、生産関連作業従事者、植木職・造園師、畳職、その他これらに類する者と定義されています。
出典:国税庁「大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得税の取扱いについて(法令解釈通達)」(平成21年12月17日付 課個5-5)、同「大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得税の取扱いに関する留意点について(情報)」
職人への支払いを外注費として処理するか給与として処理するかを検討する際には、契約書の名称だけで判断するのではなく、実際の働き方や指揮監督関係、時間的拘束、材料・工具の負担などを総合的に確認することが重要です。
Q3 決算変更届の財務諸表に対応できますか
建設業許可を持つ会社にとって、決算は税務署だけの話では終わりません。
建設業法第11条第2項は、許可を受けた建設業者に対し、毎事業年度終了時の書類を毎事業年度経過後4か月以内に国土交通大臣または都道府県知事へ提出することを義務づけています。これがいわゆる決算変更届(決算報告)です。法人税の申告期限が原則2か月であることを考えると、決算後の作業が連続することになります。
また、決算変更届に添付する財務諸表は、一般の会社が作成する決算書をそのまま提出するものではありません。
法人の場合は、建設業法施行規則で定められた様式を使用し、主に次の書類を作成します。
- 様式第15号:貸借対照表
- 様式第16号:損益計算書・完成工事原価報告書
- 様式第17号:株主資本等変動計算書
- 様式第17号の2:注記表
- 様式第17号の3:附属明細表(一定の株式会社のみ)
個人事業主の場合は、様式第18号(貸借対照表)と様式第19号(損益計算書)を使用します。
なお、様式第17号の3の附属明細表は、特例有限会社を除く株式会社のすべてに必要なわけではありません。資本金の額が1億円を超える場合、または最終事業年度の貸借対照表における負債の部の合計額が200億円以上の場合など、一定の要件に該当する会社が提出します。
建設業の財務諸表には、完成工事高、完成工事原価、未成工事支出金など、建設業特有の科目や表示区分があります。そのため、税務申告用に作成した一般の決算書をそのまま提出するのではなく、建設業法上の様式・区分に合わせて財務諸表を作成する必要があります。
出典:建設業法第11条、建設業法施行規則第4条(e-Gov法令検索)
決算変更届の具体的な書き方と提出期限の逆算は、建設業「決算変更届」の書き方ガイドで詳しく解説しています。
Q4 建設業許可の申請・更新は、どなたが行いますか
「やってもらえますか」ではなく「どなたが」と確認することも重要です。理由は次章で詳しく説明しますが、税理士の資格だけでは建設業許可の申請を代行できないためです。
望ましい回答は2通りあります。ひとつは「私自身が行政書士登録をしているので対応します」、もうひとつは「提携している行政書士事務所が担当します」。どちらでも問題ありません。避けたいのは、この質問に対して線引きが曖昧なまま「大丈夫です」とだけ返ってくるケースです。
Q5 経営事項審査のW評点を上げるには、自社は何をすればよいですか
公共工事を受注する、あるいは今後受注したい会社にとっては、この質問の答えがそのまま実利につながります。
経営事項審査(経審)は、公共工事を発注者から直接請け負おうとする建設業者が受けなければならない審査です(建設業法第27条の23)。評価項目のひとつに建設業の経理に関する状況が含まれており、ここは自社の体制づくりで点数を動かせます。詳しい仕組みは次章で整理します。
ここで確認したいのは、税理士が「うちに任せれば点数が上がります」と言うかどうかではありません。自社が何をすれば加点されるのかを説明できるかです。後述するとおり、加点の主役は社内の体制であり、外部の顧問税理士がいることそのものが点数になるわけではないからです。
経審の点数計算全体は、建設業の経営事項審査(経審)とは?点数計算・申請の流れ・費用まで解説にまとめています。
Q6 月次で工事別の粗利を出すには、こちらは何を渡せばよいですか
工事別の粗利を月次で把握するには、税理士に決算書や領収書を渡すだけでは十分とは限りません。工事ごとの売上と原価を把握できる情報を、会社側から提供できる仕組みが必要です。
例えば、工事ごとの売上に加えて、材料費・外注費・労務費・工事経費などを、どの工事にいくら使ったのか分かるようにしておく必要があります。税理士側でこれらの情報を集計する場合でも、会社側から工事ごとの原価情報を適切な単位で提供できなければ、正確な工事別粗利を算出することは難しくなります。
そのため、税理士に「月次で工事別の粗利を出したい」と伝えた際に、「どの情報を、どの単位で、いつまでに渡せばよいのか」まで具体的に回答してもらえることが重要です。
例えば、
- 工事ごとの売上をどの単位で管理するのか
- 材料費・外注費などをどのように工事へ紐付けるのか
- 労務費を工事別に集計する必要があるのか
- 工事台帳や原価管理表をどのように作成するのか
- 月次の集計に必要な資料をいつまでに提出するのか
といった点を確認してみましょう。
「こちらで全部やります」という回答だけでなく、自社側で何を準備・記録すれば月次で工事別粗利を確認できるのかまで説明してもらえるかを確認することがポイントです。
Q7 顧問料に何が含まれ、何が別料金ですか
契約後に最も揉めやすいのが料金の範囲です。建設業は工事件数や現場数で作業量が大きく変わるため、他業種以上に明確にしておく必要があります。具体的な確認項目は顧問料はどう考えるかで整理します。
なぜ建設業は「強い税理士」でないと困るのか
7つの質問の背景には、建設業に固有の3つの構造があります。いずれも業種を問わない一般的な税務知識ではカバーできません。
工期が決算期をまたぐ
多くの業種では、売上と原価がおおむね同じ期に発生します。建設業では、着工が3月・引渡しが翌期6月といったことが普通に起こります。
このとき、引渡し前の工事にかかった原価を費用として落としてしまうと、その期の利益が実態より小さく出ます。逆に、未成工事支出金として正しく資産計上すれば、利益は実態に近づきますが、資金繰りとは一致しません。帳簿上の利益と手元資金がずれるのが建設業の常態で、その前提で決算書を読める相手でないと、経営判断の材料になりません。
資金繰りそのものの構造は、建設業の資金繰り徹底ガイドで入金サイトや手形慣習まで含めて解説しています。
職人への支払いが外注費か給与かで結論が変わる
Q2で触れたとおり、同じ「職人に支払ったお金」でも、それが外注費に該当するのか給与に該当するのかによって、税務上の取扱いが変わります。
請負等に基づく外注費は、原則として消費税の課税仕入れに該当します。一方、雇用契約等に基づく給与・賃金の支払いは、課税仕入れには該当しません。また、給与に該当する場合は給与として源泉徴収が必要です。なお、外注費であっても、支払内容が所得税法上の「報酬・料金等」に該当する場合は、源泉徴収が必要となることがあります。
この判定を感覚で行っている会社は少なくありませんが、税務調査では論点になりえます。
職人に関わる費用では、法定福利費の扱いも見積書への記載義務と結びついています。詳しくは建設業における法定福利費とは?計算方法・見積書への記載義務をご覧ください。
決算が許認可に直結する
建設業許可を持っている限り、決算は毎年必ず行政への提出につながります。建設業法第11条第2項の4か月ルールに加え、公共工事を受注するなら経審が控えています。決算変更届を出していないと、許可の更新や経審の申請そのものができません。
つまり建設業では、税務・会計・許認可が一本の線でつながっています。この全体像を持っている相手かどうかが、建設業に強いかどうかの実質的な中身です。
建設業許可の要件や業種区分は、建設業許可とは?必要な工事の基準・29業種・5つの要件と申請の流れで確認できます。
「建設業会計」は法令で定義された専門領域
建設業の会計は、慣習的に違うのではなく、法令上の裏づけを持った専門領域です。ここを理解しておくと、税理士選びの基準がはっきりします。
経営事項審査に「建設業の経理に関する状況」がある
建設業法施行規則第18条の3第1項は、経審で審査する客観的事項として、建設工事の担い手の育成・確保の状況、建設業の営業継続の状況、法令遵守の状況などと並べて建設業の経理に関する状況を挙げています。
同条第3項は、この項目を次の3つで評価すると定めています。
- 会計監査人又は会計参与の設置の有無
- 建設業の経理に関する業務の責任者による、建設業の経理が適正に行われたことの確認の有無
- 建設業に従事する職員のうち、上記の確認を行える者の数
2つ目の「責任者」として条文が挙げているのは、①国土交通大臣が指定する研修を受けた公認会計士又は税理士、②登録経理試験の合格者(合格年度の翌年度開始から5年以内)、③登録経理講習の受講者(同5年以内)、④国土交通大臣がこれらと同等以上と認める者、の4類型です。
出典:建設業法施行規則第18条の3(e-Gov法令検索)
加点されるのは「社内に雇用する」有資格者
ここは誤解が生まれやすいところなので、正確に押さえておきます。
登録経理試験を実施する一般財団法人建設業振興基金は、経審での評価について次のように説明しています。W評点の「公認会計士等の数」は、社内に雇用する経審評価対象の1級・2級合格者の数で計算し、その数値は「1級の人数×1+2級の人数×0.4」で求めます。また「監査の受審状況」では、会計監査人設置会社が20点、会計参与設置会社が10点、社内の1級合格者が経理処理の適正を確認して自ら署名した書類を提出する自主監査が2点とされています。
つまり、外部の顧問税理士がいることそのものが経審の加点になるわけではありません。加点の主役は自社の体制です。だからこそQ5では「御社に任せれば上がりますか」ではなく「自社は何をすればよいですか」と聞きます。建設業を分かっている税理士であれば、社内で誰に建設業経理士を取らせるか、いつまでに受験させるか、という計画の話ができます。
なお登録経理講習は、令和5年4月以後の経審において、登録経理試験の合格後5年を経過した者が評価対象であり続けるために必要な継続教育です。合格して終わりではない点にも注意が必要です。
出典:一般財団法人建設業振興基金「経営事項審査の改正に伴う経理士等の評価」「登録建設業経理士制度」
「建設業 税理士 2級」は建設業経理士2級のこと
「建設業 税理士 2級」「建設業 税理士 資格」と検索される方が一定数いますが、これは税理士試験の級ではありません。建設業経理士2級を指していることがほとんどです。
建設業経理検定は、一般財団法人建設業振興基金が実施する検定で、1級・2級の合格者が「建設業経理士」、3級・4級の合格者が「建設業経理事務士」となります。このうち1級・2級が、建設業法施行規則にいう登録経理試験にあたります。
試験の内容は、建設業法施行規則第18条の20第1項第1号により、次の4つを含むものと定められています。
- 会計学
- 会社法その他会計に関する法令
- 建設業に関する法令(会計に関する部分に限る)
- その他建設業会計に関する知識
税理士資格とは別系統の制度であり、税理士だから建設業経理士でもある、ということにはなりません。逆に、自社の経理担当者が建設業経理士2級を取ることには、経審のW評点という直接的な見返りがあります。税理士に外注する話とあわせて、社内で取得を進める価値があります。
税理士に頼めること・頼めないこと
「建設業許可も社会保険もまとめてお願いしたい」という要望はよく聞きます。ただし、士業の業務範囲は法律で区切られており、資格がなければ報酬を得て代行することはできません。ここを正確に知っておくと、Q4の質問の意味がはっきりします。
税理士の業務は税務代理・税務書類の作成・税務相談
税理士法第2条第1項は、税理士の業務を①税務代理、②税務書類の作成、③税務相談の3つと定めています。同法第52条により、税理士または税理士法人でない者はこれらを業として行うことができません。
さらに同条第2項で、税理士業務に付随する業務として、財務書類の作成、会計帳簿の記帳の代行その他財務に関する事務を行えるとしています。ただしこの項には、「他の法律においてその事務を業として行うことが制限されている事項については、この限りでない」というただし書きが付いています。これが次の話につながります。
出典:税理士法第2条・第52条(e-Gov法令検索)
建設業許可や決算変更届の作成は行政書士の業務
行政書士法第1条の3第1項は、行政書士の業務を「他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類を作成すること」と定めています。そして同法第19条第1項は、行政書士または行政書士法人でない者が、報酬を得て業としてこの業務を行うことを禁じています。
建設業許可の申請書も、決算変更届も、都道府県知事または国土交通大臣に提出する書類です。したがって税理士の資格だけでは、報酬を得て業として作成することはできません。
ただし、行政書士法第2条第5号は、税理士となる資格を有する者は行政書士となる資格を有すると定めています。行政書士登録をしている税理士であれば、建設業許可の申請にも対応できます。「できない」ではなく「登録しているか、提携しているかで決まる」というのが正確な理解です。
出典:行政書士法第1条の3・第2条・第19条(e-Gov法令検索)
社会保険・労働保険の手続きは社会保険労務士の業務
社会保険労務士法第2条第1項は、労働社会保険諸法令に基づく申請書等の作成、提出手続の代行、事務代理、帳簿書類の作成、労務管理に関する相談・指導を社会保険労務士の業務としています。同法第27条により、社会保険労務士または社会保険労務士法人でない者は、報酬を得てこれらの事務を業として行うことができません。
建設業では社会保険の適正加入が元請からの要請として求められる場面も多く、ここも避けて通れない領域です。
出典:社会保険労務士法第2条・第27条(e-Gov法令検索)
だから「税理士単体」ではなく「士業チーム」で見る
整理すると、建設業の会社が日常的に必要とする手続きは、次のように分かれます。
やりたいこと | 担当する士業 | 根拠 |
|---|---|---|
法人税・消費税の申告、税務相談 | 税理士 | 税理士法第2条 |
記帳代行、決算書の作成 | 税理士(付随業務) | 税理士法第2条第2項 |
建設業許可の申請・更新、決算変更届の提出 | 行政書士 | 行政書士法第1条の3・第19条 |
経営事項審査の申請 | 行政書士 | 行政書士法第1条の3・第19条 |
社会保険・労働保険の手続き、就業規則 | 社会保険労務士 | 社会保険労務士法第2条・第27条 |
1人の税理士がこれを全部カバーすることは、複数の資格を持っていない限りありません。現実的な選び方は、税理士単体で見るのではなく、その税理士の背後にどの士業がついているかで見ることです。
【独自調査】建設業を支える士業・専門家60社の内訳
では実際に、建設業の会社はどの士業を必要としているのでしょうか。サクミルのパートナー制度に参加している士業・専門家60社の内訳を集計しました。
※母集団はサクミルのアンバサダー制度に参加する士業・専門家60社(2026年9月時点・自社調べ)です。全国の士業の分布を示すものではなく、あくまで建設業向けの業務管理サービスと連携している事業者の構成である点にご留意ください。
最も多いのは税理士ではなく行政書士
カテゴリ | 社数 | 構成比 |
|---|---|---|
行政書士 | 22 | 36.7% |
コンサルタント | 11 | 18.3% |
その他 | 10 | 16.7% |
税理士 | 6 | 10.0% |
社労士 | 5 | 8.3% |
建設業関連サービス | 4 | 6.7% |
金融サービス | 2 | 3.3% |
合計 | 60 | 100% |
行政書士が税理士の3.7倍という結果になりました。税務顧問は業種を問わず必要ですが、建設業許可・決算変更届・経営事項審査は建設業だけに発生し、しかも毎年繰り返されます。建設業の士業ニーズが許認可に強く偏るのは、この構造によるものと考えられます。
なお税理士カテゴリには、顧問先2万件超を掲げる辻・本郷税理士法人をはじめ、全国対応の事務所から地域密着の事務所まで6社が参加しています。
税理士は全国から選べる、許認可は地元で押さえる
対応エリアの登録状況を見ると、カテゴリによってはっきりした差が出ました。
カテゴリ | 社数 | 全国対応 | 地域限定 |
|---|---|---|---|
行政書士 | 22 | 1 | 21 |
コンサルタント | 11 | 8 | 3 |
税理士 | 6 | 2 | 4 |
社労士 | 5 | 1 | 4 |
行政書士は22社中21社が地域を限定して登録しています。建設業許可の多くが都道府県知事許可で、窓口も要件の運用も地域に紐づくためと考えられます。一方、税理士は6社中2社が全国対応で登録しており、税務顧問はオンラインでも成立しやすいことがうかがえます。
ここから導けるのは、「税理士は全国から選び、許認可は地元で押さえる」という組み合わせ方です。地元に建設業に強い税理士が見つからない場合でも、税務顧問を全国対応の事務所に任せ、許認可は地元の行政書士に依頼すれば成立します。
所在地は23都道府県にとどまる
60社の所在地を都道府県別に見ると、東京13社、愛知9社、大阪5社、神奈川5社と続き、この4都府県だけで32社(53.3%)を占めました。所在地が確認できたのは23都道府県で、残り24県には該当がありません。
地方ほど、近隣で建設業に詳しい士業を見つけること自体が難しいのが実情です。だからこそ、前項の「全国対応の税理士+地元の行政書士」という組み合わせが現実的な解になります。
実際に登録されている事務所は、カテゴリと対応エリアで絞り込めるサクミルのパートナー一覧で確認できます。
顧問料はどう考えるか
先に率直にお伝えします。建設業の税理士顧問料について、一般に検証できる公的な統計は存在しません。
税理士報酬の全国的な調査としては日本税理士会連合会の「税理士実態調査報告書」がありますが、最新の第7回(2025年2月公表)は会員専用として公開されており、同会のページにも内部資料である旨と複製・転載を禁じる旨が明記されています。一般の方が原典を確認することはできません。
ネット上で見かける「月1〜3万円が相場」といった数字は、出典をたどると各事務所の体感や自社料金表に行き着くことがほとんどです。金額の目安を探すより、料金の内訳を確認するほうが確実です。
料金は3層に分けて確認する
税理士への支払いは、おおむね次の3つに分かれます。見積を受け取ったら、この3つが別々に書かれているかをまず確認してください。
区分 | 内容 | 確認したいこと |
|---|---|---|
顧問料 | 月次の相談・巡回・試算表の作成 | 訪問頻度、月次資料の内容、担当者は誰か |
記帳代行料 | 仕訳入力の代行 | 仕訳数の上限、工事別の入力を含むか |
決算申告料 | 決算書・申告書の作成と提出 | 建設業の財務諸表(様式第15号〜)を含むか |
建設業でとくに確認すべきなのが、3行目の決算変更届用の財務諸表が決算申告料に含まれるかです。税務署提出用の決算書と、許可行政庁提出用の建設業財務諸表は別物です。ここが別料金になっているケースは珍しくありません。
建設業で料金が上振れしやすい条件
同じ売上規模でも、次の条件がそろうと作業量が増え、料金も上がりやすくなります。契約前に自社がどれに当てはまるかを伝えておくと、後からの追加請求を避けられます。
- 工事件数が多い:工事別の原価集計が必要なため、仕訳数が増える
- 許可業種数が多い:決算変更届の工事経歴書を業種ごとに作成する必要がある
- 知事許可と大臣許可の別:大臣許可は納税証明書の取得先が異なる
- 経審を受ける:決算から経審申請までのスケジュールが固定され、決算作業の前倒しが必要になる
- 外注先が多い:外注費と給与の区分、インボイス対応の確認対象が増える
なお、節税そのものの考え方は建設業の節税術|経営者や一人親方の税金対策で別途まとめています。
税理士に依頼する前に、自社で整えておくデータ
最後に、意外と見落とされる点を挙げておきます。税理士がどれだけ優秀でも、渡すデータが揃っていなければ月次の数字は出てきません。
工事台帳が揃っていないと何も始まらない
工事別の粗利を出すには、工事ごとに材料費・労務費・外注費・経費が集計されている必要があります。これを担うのが工事台帳です。
工事台帳がない、あるいは現場ごとにバラバラのExcelで管理されている状態だと、税理士は全社合計の数字しか作れません。結果として「決算が終わってから赤字現場に気づく」ことになります。書き方とテンプレートは工事台帳とは?書き方・作り方と無料エクセルテンプレートで解説しており、Excel工事台帳のテンプレートも無料で配布しています。
工事別原価が月次で出る状態にする
工事台帳ができたら、次は更新の頻度です。完成後にまとめて入力するのでは、経営判断には間に合いません。実行予算と実績を突き合わせながら進捗を追える状態にして初めて、期中に手を打てます。
原価管理の進め方は建設業の原価管理とは?正しい手順と利益を最大化する5つのポイントにまとめています。
サクミルで日々の入力を原価データに変える
サクミルは、見積・発注・請求・出面・日報といった日々の業務入力が、そのまま工事別の原価データとして積み上がる建設業向けの業務管理アプリです。現場で入力したものが工事台帳に反映されるため、月次で工事別の粗利を確認でき、税理士に渡す資料も同じデータから出力できます。
税理士に丸投げするのではなく、自社で数字を持ったうえで相談する。そのほうが、同じ顧問料でも受け取れるアドバイスの質は上がります。
よくある質問
建設業に強い税理士かどうかは、どこで見分けられますか?
「建設業の顧問実績が豊富です」といった説明だけでは判断できません。検証できる質問を投げるのが大事です。未成工事支出金の管理単位、外注費と給与の判定基準、決算変更届の様式、建設業許可の担当者。この4つは建設業の実務を知らなければ具体的に答えられません。回答が抽象的なまま終わるかどうかが、最も分かりやすい判別材料になります。
建設業許可の申請も税理士に頼めますか?
税理士の資格だけでは代行できません。建設業許可の申請書や決算変更届は官公署に提出する書類にあたり、行政書士法第1条の3・第19条により、報酬を得て業として作成できるのは行政書士に限られます。ただし同法第2条第5号で、税理士となる資格を有する者は行政書士となる資格を有すると定められているため、行政書士登録をしている税理士なら対応できます。確認すべきは「やってもらえますか」ではなく「ご自身が行政書士登録をされていますか、それとも提携先が対応されますか」です。
「建設業 税理士 2級」とは税理士の資格のことですか?
税理士試験の級ではなく、一般財団法人建設業振興基金が実施する建設業経理士2級を指していることがほとんどです。建設業経理士は1級・2級、建設業経理事務士は3級・4級で、建設業法施行規則第18条の20が試験内容を会計学、会社法その他会計に関する法令、建設業に関する法令のうち会計に関する部分、その他建設業会計に関する知識と定めています。経営事項審査では社内に雇用する1級・2級合格者が評価対象になります。税理士資格とは別の制度です。
建設業の税理士顧問料の相場はいくらですか?
一般に検証できる公的な統計は存在しません。日本税理士会連合会の「第7回税理士実態調査報告書」は会員専用として公開されており、一般には参照できないためです。金額の目安を探すより、顧問料・記帳代行料・決算申告料の3つがそれぞれいくらで、工事件数や許可業種数が増えたときに何が加算されるのかを、契約前に書面で確認するほうが確実です。
外注費と給与の区分は、どう判定すればよいですか?
国税庁の法令解釈通達(平成21年12月17日付 課個5-5)が判定基準を示しています。請負契約に基づく対価か雇用契約に基づく対価かで判定し、区分が明らかでないときは、他人が代替できるか、時間的な拘束を受けるか、作業の具体的な内容や方法について指揮監督を受けるか、引渡し前に完成品が滅失した場合に報酬を請求できるか、材料や用具等を支払者から供与されているか、の5点を総合勘案するとされています。
まとめ
建設業に強い税理士を選ぶうえで、押さえておきたい点を整理します。
- 「実績が豊富か」ではなく、答えられるかで判断する。未成工事支出金、外注費と給与の区分、決算変更届の様式、建設業許可の担当者の4点は、知らなければ具体的に答えられない
- 建設業の税務・会計・許認可は一本の線でつながっている。決算後4か月以内の決算変更届(建設業法第11条第2項)、経営事項審査(同第27条の23)まで見えている相手を選ぶ
- 税理士単体ではなく、背後の士業チームで見る。建設業許可や経審の申請は行政書士、社会保険の手続きは社会保険労務士の業務で、資格がなければ代行できない
- 税理士は全国から選び、許認可は地元で押さえる。パートナー60社の集計でも、行政書士は22社中21社が地域限定、税理士は6社中2社が全国対応だった
- 顧問料は金額より内訳を確認する。とくに決算変更届用の建設業財務諸表が決算申告料に含まれるかは要確認
- 経審の加点は自社の体制で決まる。社内に建設業経理士を置く計画まで一緒に考えられる相手が望ましい
そして、どれだけ良い税理士に出会っても、渡すデータが揃っていなければ月次の数字は出てきません。工事台帳と工事別原価を自社で持つことが出発点になります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の税務判断を示すものではありません。実際の処理にあたっては、顧問税理士または所轄の税務署にご確認ください。記載の法令は執筆時点の内容です。
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