
デジタル化・AI導入補助金2026を建設業で使う|補助額・対象ツール・申請の流れ
「AIを使った施工管理や見積のツールを入れたいが、費用が気になる」。そんな建設会社が使える制度が、2026年度からIT導入補助金の名称を変えて実施されている「デジタル化・AI導入補助金」です。検索では「AI導入補助金」「AI補助金」と呼ばれることもあります。
本記事では、公式サイトと公募要領(2026年度版)をもとに、建設業がこの補助金を使うときに押さえておきたい申請枠と補助額、補助対象になるITツール、元請けが使える「電子取引類型」、賃上げ要件と返還リスク、申請の流れと締切を解説します。
この記事の要点:
- AI専用の枠はない:旧IT導入補助金の名称変更です。AIを含むソフトウェアが補助対象で、施工管理・積算・工事台帳などの建設業向けツールも登録されていれば使えます。
- 通常枠は最大450万円:補助率は原則1/2以内です。ただし150万円以上を申請する場合は、賃上げ計画の策定と従業員への表明が必須になります。
- 元請けは「電子取引類型」も候補:下請けに受発注ソフトのアカウントを無償で提供する場合、大企業も含めて補助を受けられます。
- 次の締切は2026年10月30日(金)17:00(通常枠6次締切)。GビズIDプライムはマイナンバーカードを使ったオンライン申請なら最短即日で発行されます。
デジタル化・AI導入補助金とは?(旧IT導入補助金)
デジタル化・AI導入補助金は、中小企業・小規模事業者が生産性向上のためにITツール(ソフトウェア、サービス等)を導入する費用の一部を補助する制度です。中小企業基盤整備機構が実施し、2025年度まで「IT導入補助金」として実施されていたものが、2026年度から現在の名称になりました。
申請は、事務局に登録された「IT導入支援事業者」(ITツールの販売・提供事業者)と共同で行います。自社だけで申請書を作るのではなく、導入したいツールを扱う支援事業者と一緒に事業計画を作り、申請する仕組みです。
「AI」の枠が新設されたわけではない
名称に「AI」が入ったため、AIツール専用の補助金ができたと思われがちですが、そうではありません。公募要領では、補助対象のITツールを「ソフトウェア(AIを含む)・オプション・役務・ハードウェアの総称」と定義しています。つまり、AI機能を持つソフトウェアも、従来どおりの業務ソフトと同じ枠組みで申請します。
導入したいツールにAIが搭載されているかどうかは、公式サイトの「ITツール検索」で機能概要を確認できます。
出典:デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(通常枠)
建設業で対象になる会社
建設業の場合、次のどちらかを満たす会社と個人事業主が対象です。
- 資本金(出資の総額)が3億円以下
- 常時使用する従業員が300人以下
一人親方などの個人事業主も対象に含まれます。一方で、直近3年分の課税所得の年平均が15億円を超える会社や、大企業の子会社などの「みなし大企業」は対象外です。
申請枠と補助額の一覧【2026年度】
デジタル化・AI導入補助金には、目的別に5つの申請枠(類型)があります。建設会社が主に検討するのは、通常枠、インボイス枠(インボイス対応類型・電子取引類型)、セキュリティ対策推進枠の4つです。
申請枠 | 補助額 | 補助率 | 建設業での主な使いどころ |
通常枠 | 5万円以上150万円未満(1プロセス以上) | 1/2以内(条件を満たすと2/3以内) | 施工管理、工事台帳、積算・見積、写真管理などの業務ソフト |
インボイス枠(インボイス対応類型) | ソフト:〜350万円 | ソフト50万円以下の部分は3/4以内(小規模事業者は4/5以内)、50万円超の部分は2/3以内 | インボイス対応の会計・受発注・請求(決済)ソフトと、その利用に必要な端末 |
インボイス枠(電子取引類型) | 〜350万円 | 中小企業・小規模事業者等は2/3以内、その他(大企業含む)は1/2以内 | 元請けが受発注ソフトを導入し、下請けにアカウントを無償提供する場合 |
セキュリティ対策推進枠 | 5万円〜150万円 | 中小企業1/2以内、小規模事業者2/3以内 | 「サイバーセキュリティお助け隊サービス」の利用料(最大2年分) |
複数者連携デジタル化・AI導入枠 | グループ全体で最大3,000万円など | 経費区分により異なる | 商工団体や複数社のグループで共同導入する場合 |
出典:申請枠・申請類型(デジタル化・AI導入補助金2026)
通常枠:業務ソフトの導入に使う基本の枠
通常枠は、自社の課題に合った業務ソフトを導入するための枠です。補助額は導入するソフトが持つ「業務プロセス」の数で決まり、1プロセス以上なら5万円以上150万円未満、4プロセス以上なら150万円以上450万円以下です。
補助率は原則1/2以内です。2024年10月〜2025年9月のうち3か月以上、地域別最低賃金に近い水準(2025年度改定の地域別最低賃金未満)で雇用している従業員が全体の30%以上いる場合は、2/3以内に引き上げられます。
補助対象になる経費は次のとおりです。
- ソフトウェア購入費・クラウド利用料(最大2年分)
- 機能拡張・データ連携ツール・セキュリティなどのオプション
- 導入コンサルティング、導入設定、マニュアル作成、導入研修、保守サポートなどの役務(上限200万円)
なお、業種を問わない汎用ツール(汎用・自動化・分析ツール)だけでの申請はできません。業務プロセスを持つソフトと組み合わせる必要があります。
インボイス枠(インボイス対応類型):請求・会計まわりと端末
インボイス制度に対応した「会計」「受発注」「決済」のいずれかの機能を持つソフトを導入する枠です。通常枠より補助率が高く、ソフトの利用に必要なPC・タブレット(上限10万円)やレジ(上限20万円)も補助対象に含められます。ただし、ハードウェアだけの申請はできません。
請求書の発行や会計処理をインボイス対応のソフトに切り替えたい場合に検討する枠です。建設業向けの請求書ソフトは建設業におすすめの請求書ソフトで比較しています。
セキュリティ対策推進枠
情報処理推進機構(IPA)の「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載され、事務局に登録されたサービスの利用料(最大2年分)を補助する枠です。図面や顧客情報をクラウドで扱う機会が増えた会社は、業務ソフトの導入とあわせて検討するとよいでしょう。
出典:セキュリティ対策推進枠
建設業で補助対象になるITツールの例
公募要領の「業種・プロセス一覧」には、建設・土木業の業種固有プロセス(建P-06)として、次のような機能が挙げられています。
分野 | 公募要領に挙げられている機能の例 |
施工管理 | 工事案件・契約、日報管理、原価管理・実行予算管理、作業員・資材手配、安全管理 |
工程・品質・写真 | 工程管理(工程表)、品質管理、写真管理、工事台帳、出来形管理、電子小黒板 |
積算・設計 | 積算、拾い出し、見積、CAD、図面管理、BIM/CIM対応 |
測量・3D | 点群データ解析・処理、写真測量、ドローンマッピング |
安全衛生・提出書類 | 作業手順・巡視記録、グリーンファイル作成・管理、ヒヤリハット、建築確認申請書等の法令提出、電子納品対応 |
このほか、顧客対応・販売支援、会計・財務、総務・人事・給与などの共通プロセスも対象です。たとえば工事台帳と会計を連携するソフトであれば、建設業固有のプロセスと共通プロセスの両方を持つことになります。
ただし、実際に補助を受けられるのは、IT導入支援事業者が事務局に登録したツールだけです。検討中の製品が登録されているかどうかは、必ずITツール検索で確認してください。製品の選び方は、施工管理アプリ、工事台帳ソフト、積算ソフトの比較記事も参考になります。
AIを使って建設業のどの業務を効率化できるかは建設業のAI活用ガイド、見積作成のAIについては見積もりAIとはで解説しています。
元請けなら「電子取引類型」も選択肢になる
インボイス枠の「電子取引類型」は、建設業の元請け・下請けの関係と相性のよい枠です。発注側の事業者がインボイス対応の受発注ソフト(クラウド型)を導入し、取引先である中小企業・小規模事業者に受注側のアカウントを無償で提供する場合に、その費用の一部が補助されます。
- 申請できる会社:中小企業・小規模事業者と受発注の取引がある事業者。大企業も含まれます。
- 補助率・上限:中小企業・小規模事業者等は2/3以内、その他の事業者は1/2以内。補助額の上限は350万円(下限なし)。
- 補助対象:クラウド利用料(最大2年分)。契約するアカウントのうち、取引先の中小企業・小規模事業者に提供するアカウントの割合に応じた額が対象です。
協力会社との注文書・請書や請求のやり取りを、紙やメールからクラウドの受発注システムにまとめたい元請けにとっては、下請け側の負担を増やさずにデジタル化を進められる枠です。
150万円以上なら賃上げ計画が必須|未達だと返還も
通常枠では、申請額によって求められる要件が変わります。いずれの場合も、交付申請の翌事業年度から3年間の事業計画を作り、実行することが前提です。
要件 | 150万円未満 | 150万円以上 |
労働生産性(1年後・年平均成長率) | 3%以上(必須) | 3%以上(必須) |
1人当たり給与支給総額の年平均成長率 | 3%以上で加点 | 3%以上(必須) |
事業場内最低賃金 | 地域別最低賃金+30円以上で加点 | 地域別最低賃金+30円以上(必須)。+50円以上でさらに加点 |
賃金引上げ計画の従業員への表明 | 加点 | 必須 |
※IT導入補助金2022〜2025で交付決定を受けたことがない事業者の場合。
150万円以上を申請して賃上げ目標を達成できなかった場合(期限内に報告しなかった場合を含む)は、補助金の全部または一部の返還を求められます。たとえば事業場内最低賃金の目標が1年度目の報告で未達だった場合は、全額が返還の対象です。事業場内最低賃金の目標については、付加価値額の伸びが年平均1.5%に届かない場合や天災など、事業者の責任によらない理由がある場合は返還を求めないとされています。申請額を決める前に、3年間の賃上げを実行できるかを確認しておきましょう。
なお、150万円以上の要件を満たしていても、申請額を自主的に150万円未満にすることはできます。
過去にIT導入補助金を受けた会社の注意点
IT導入補助金2022〜2025で交付決定を受けた会社も申請できますが、次の点が異なります。
- 減点:審査で減点されます。以前と同じ機能(会計・受発注・決済)のツールを導入する場合は、さらに減点されます。
- 賃上げ要件が厳しくなる:150万円未満でも、1人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上の計画と、従業員への表明が申請要件になります。
- 12か月の申請制限:IT導入補助金2025の通常枠(または複数社連携IT導入枠)で交付決定を受けた会社は、交付決定日から12か月以内は2026年の通常枠に申請できません。
申請の流れ
中小企業・小規模事業者が行う手続きは、おおむね次の順番です。
- 制度を理解する:公式サイトと公募要領で、申請枠と要件を確認します。
- GビズIDプライムを取得し、SECURITY ACTIONを宣言する:GビズIDプライムは、事業主のマイナンバーカードを使ったオンライン申請なら最短即日で発行されます(書類の郵送による申請も可能です)。SECURITY ACTIONは2026年4月から新しい管理システムに移り、申込み直後に自己宣言IDが発行されます。2026年3月以前に宣言して取得した旧ID(4で始まるID)は、2026年5月12日17時以降の公募では使えません。補助金の申請に使うGビズIDで、新しい管理システムから宣言し直してください。
- IT導入支援事業者とITツールを選ぶ:自社の業種・規模・課題に合うツールと、その支援事業者を選定します。
- 交付申請:支援事業者から「申請マイページ」に招待を受け、基本情報の入力と書類の添付を行います。ツール情報と事業計画値は支援事業者が入力し、最後に申請者が内容を確認して提出します。
- 交付決定:審査を通過すると交付決定の通知が届き、補助事業を開始できます。
- ITツールの契約・導入・支払い、事業実績報告:交付決定後に契約・発注し、納品・支払いを終えたら実績報告を行います。報告が承認されると補助金が交付されます。
- 効果報告:交付後も、事業計画期間中は生産性や賃金の実績を報告します。
交付決定前に契約・発注・購入したITツールは補助対象になりません。リース・レンタル契約や中古品も対象外なので、支援事業者と契約のタイミングを必ず確認してください。
出典:新規申請・手続きフロー(デジタル化・AI導入補助金2026)、GビズID(デジタル庁)、SECURITY ACTION管理システムのリリースについて(IPA)
2026年のスケジュールと締切
2026年度の交付申請は2026年3月30日から受け付けており、締切ごとに審査が行われています。2026年9月30日時点で公表されている直近の締切は次のとおりです(通常枠6次・インボイス枠6次・セキュリティ対策推進枠6次・複数者連携枠3次)。
項目 | 日程 |
締切日 | 2026年10月30日(金)17:00 |
交付決定日 | 2026年12月10日(木)(予定) |
事業実施期間 | 交付決定〜2027年5月31日(月)17:00(予定) |
事業実績報告期限 | 2027年5月31日(月)17:00(予定) |
通常枠などには7次締切も設けられていますが、日程は公式サイトで随時公表されます。締切直前は申請マイページが混み合うため、余裕をもって提出しましょう。
出典:事業スケジュール(デジタル化・AI導入補助金2026)
ほかにAI導入に使える補助金
AIを使った機械や設備の導入、新しい事業の立ち上げなど、ソフトウェアの導入を超える投資には、中小企業省力化投資補助金や新事業進出・ものづくり商業サービス補助金などが使える場合があります。建設業で使える補助金・助成金の全体像は建設業で使える補助金・助成金一覧にまとめています。
よくある質問
AI導入補助金とIT導入補助金は何が違いますか?
2026年度からIT導入補助金の名称が「デジタル化・AI導入補助金」に変わりました。AIツール専用の申請枠が新設されたわけではなく、公募要領ではITツールのうち「ソフトウェア(AIを含む)」が補助対象と定義されています。AI搭載の有無は公式サイトの「ITツール検索」で確認できます。
建設業の個人事業主(一人親方)も申請できますか?
申請できます。建設業は「資本金3億円以下または常時使用する従業員300人以下」の会社と個人事業主が対象です。いずれの場合もGビズIDプライムの取得とSECURITY ACTIONの宣言が必要です。
施工管理アプリや工事台帳ソフトは補助の対象になりますか?
事務局に登録されたITツールであれば対象です。公募要領の業種プロセス一覧では、建設・土木業の業種固有プロセスとして施工管理、工程管理、写真管理、工事台帳、積算・見積、電子小黒板、グリーンファイル作成などが挙げられています。導入したい製品が登録済みかどうかは「ITツール検索」で確認してください。
補助金はいつ受け取れますか?先に契約してもよいですか?
補助金は、交付決定後にITツールを契約・導入・支払いし、事業実績報告を終えてから交付される後払いです。交付決定前に契約・発注・購入したITツールは補助対象になりません。リース・レンタル契約や中古品も対象外です。
過去にIT導入補助金を受けた会社も申請できますか?
申請できますが、審査で減点され、補助額150万円未満でも賃上げ計画(1人当たり給与支給総額の年平均3.5%以上)が申請要件になります。また、IT導入補助金2025の通常枠で交付決定を受けた会社は、交付決定日から12か月以内は2026年の通常枠に申請できません。
まとめ|申請前に「ツールの登録」と「賃上げ計画」を確認しよう
デジタル化・AI導入補助金は、施工管理や工事台帳、積算・見積などの建設業向けソフトの導入費用を抑えられる制度です。名称に「AI」が入りましたが、AI専用の枠はなく、登録されたITツールであればAIの有無にかかわらず申請できます。
- 導入したい製品が「ITツール検索」で登録済みかを確認する
- 150万円以上を申請するなら、3年間の賃上げ計画を実行できるかを確認する
- 元請けとして協力会社とのやり取りをデジタル化するなら、電子取引類型も検討する
- GビズIDプライムとSECURITY ACTIONの自己宣言IDを先に用意し、交付決定前には契約しない
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